好都合なことに、「初期療法」の実施機運が高まってきた時期に「化学伝達物質遊離抑制薬」や「第2世代抗ヒスタミン薬」という新薬が登場しました。これらは、服用後すぐに効果が出るものではなく、出るまでに1〜2週間程度の時間が必要なクスリで、その意味でも、症状が出る前からクスリをのんでおく「初期療法」に結びついたのは、ごく自然な流れでした。
そして、確かに効果があったのです。症状がほとんどなくなる、もしくはあってもごく軽くてすみ、歯限が切げられたり、イライラが募ったりすることもなくなります。
い人に鼻水などの症状は、花粉が鼻などの粘膜にくっついた後、アレルギー反応によって放出されたヒスタミンなどの化学伝達物質(ケミカル・メディエーター) やサイトカイン(免疫システムの細胞から放出される生理活性物質)によるものです。その物質が力を発揮するには、細胞表面にある受容体にくっつかなくてはなりません。早めにクスリをのんでおくと、クスリがその受容体に先に結合して、ヒスタミンなどが受容体にくっつくのを防いでくれるのです。逆に、クスリがくっつく前にヒスタミンが受容体と結合してしまうと、その結合がなくなるまで、クスリはくっつくことができず、それだけクスリが効きにくくなります。症状が重くなると、どんなクスリも効きづらくなるのは、このためです。
つまり、花粉症治療は先手必勝が原則で、その意味でも「初期療法」は優れた治療法なのです。
使うのは私たち医師が処方するクスリが中心ですが、薬局で売っている一部のクスリも使えます。「スイッチOTC」 (overthe counter、大衆薬)といって、以前は病院でしか使えなかったクスリが、今は普通の薬局でも売られるようになったからです。この流れは今後さらに広がると思われますが、いずれにせよ、患者一人一人の違いもあり、かつ副作用もあるので、必ず診察を受けて、医師に判断と処方をしてもらってください。
というわけで、この初期療法のメリットは、
1. 症状が出る時期を遅らせることができる
2. 花粉の飛談量が多い時期の症状を軽くすることができる
る.塩果的に、クスリの全体量や使用回数を減らずことがて
きるということですから、
●症状が中等症以上で、
●ラクに花粉シーズンを乗り切りたいと考えている人に、ぜったいおススメの治療法なのです。
ただし、この「初期療法」をしたら 100%症状が出ない、ということではありませんし、いま花粉症でない人が花粉症にならないための予防でもありません。
現在、かかっている人の発症を遅らせ、症状を軽くするための治療法で、しかもシーズン中はずっと服薬を続けなくてはなりません。よくなったと思って途中でやめては、効果がありませんから、「予防」的な治療というより「早期介入」とか「早期治療」というほうがいいかもしれません。それでも、スギ花粉が飛ぶ最感期の症状を3分の1ほど軽くでき、症状が出る時期を遅らせる効果もあります。また、これらの効果は、いくら上手に市販薬を使っても得られないことも明らかです。
花粉症が止まらないとか、クスリが効かないといわれるのは、少し症状が出たかなという時には行かないで、悪化してから病院へ行くからです。炎症が最大になってヒスタミンがどんどん出ている時に、ヒスタミンを抑えて、その後ブロックしてというには、かなりの時間がかかります。その点、成物がらのんでいれば、ヒスタミンが少量しか出ていない時ですから、ラクにクスリが受容体と結合でき、症状を和らげることができるのです。
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